「忙しい」と「金欠」の正体は同じ? 文系でも理解できた『計数感覚』とは

シニアデジタル

「私は根っからの文系で、数字はどうも苦手で……」

サラリーマン生活の現場でそう耳にすることが度々ありましたが、正直に言えば、私自身もその一人です。どこがどう分からないのかも言えないけれど、なんとなく数字を見ると身構えてしまう。

しかし、長く社会人をしてきた身として、気づくのです。 「感覚」だけで処理しようとするとモヤモヤするけれど、「数字」を補助線にして考えると、ストンと腹落ちする瞬間が何度もあることに。

そこで私は、改めて**「計数感覚(数字のセンス)」**とは一体何なのか、自分なりに考え直してみました。

多くの人が誤解していますが、計数感覚とは「計算の速さ」ではありません。複雑な方程式を解く力でも、Excelの達人になることでもない。これらはあくまで「技術」です。

私がたどり着いた結論。 計数感覚とは、**「目の前の『モヤモヤ』を数字に翻訳する力」であり、逆に「数字からリアルな風景をイメージする力」**のことでした。

「忙しい」と「金欠」は、どちらも構造が同じ

具体的にどういうことか。日常生活でよくある「モヤモヤ」を例に考えてみましょう。

  • 今日はずっと動いていたのに、思ったほど仕事が進んでいない
  • 節約しているつもりなのに、なぜかお金が減っていく
  • 予定を立てても、毎回どこかで時間が足りなくなる

このとき、私たちはつい精神論で片づけがちです。 「もっと集中力が足りないんだ」「私の意志が弱いから、無駄遣いしてしまうんだ」と。

もちろん意識は大事ですが、原因が“意志の弱さ”ではなく、単なる**「実態からのズレ」**だとしたらどうでしょう?

たとえば仕事。「忙しい」の中身を数字でほどいてみると、案外シンプルです。

  • 会議:90分
  • 細切れの問い合わせ対応:30分
  • 準備や移動:20分

合計140分。気づけば、午前中にまとまって集中できる時間は、もう残っていません。それなのに「今日は5件進めるぞ」と気合だけで計画していたら、苦しくなるのは当然です。

お金も全く同じです。「そんなに使ってないのに」の中身を分解すると……

  1. 1回あたりは小さい出費(カフェ、コンビニ、送料)
  2. “たまに”払う出費(サブスク年払い、保険、更新料)
  3. 気づきにくい出費(手数料、金利、ステルス値上げ)

どれも1つ1つは軽く見える。でも積み上がると、ボディブローのように効いてくる。 つまり、仕事もお金も、問題は「根性」ではなく、**数字で把握できていない「構造」**にあることが多いのです。

ここで効いてくるのが「計数感覚」です。 合計を「単位あたり」に直す。%を「結局いくら?」に戻す。 このクセがつくだけで、仕事の詰まり方も、お金の減り方も、急に「説明」できるようになります。説明できれば、対策が湧いてきます。そして、漠然とした焦りが消えるのです。

ビジネスのプロが使う「5つの定石」

では、この感覚をどう養えばいいのか。 色々と調べていく中で、ビジネスの最前線で活躍するコンサルタントや投資家たちが、共通して行っている思考のパターンに出会いました。

これらは決して奇をてらった真新しいテクニックではなく、むしろ**「定石(じょうせき)」として使い古されてきた、思考の基本型**だそうです。 古今東西のビジネス書で語られてきたエッセンスを、明日から使える形に抜き出してみました。

1. 形容詞を「数字」に翻訳する

私たちは普段、無意識に「形容詞」で会話を済ませてしまいます。「すごい」「多い」「早い」。これらは便利ですが、認識のズレを生む原因です。 まずは、この形容詞を数字に置き換える「翻訳癖」をつけましょう。

  • 「今日は暑いな」
    • → 「28度くらいありそうだ」(肌感覚を過去のデータと照合)
  • 「あの店、混んでいるね」
    • → 「満席率120%くらいで、待ちが3組いるな」
  • 「なるべく急ぎで」
    • → 「14時までに下書き案が必要です」

これを意識するだけで、世界を見る**「解像度」**が劇的に上がります。ぼんやりとした景色が、急にクッキリと見えてくるはずです。

2. 自分の中に「モノサシ(基準値)」を持つ

数字を見せられたとき、瞬時に「高い!」「安い!」と反応できる人と、「へぇ〜」で終わってしまう人の差。それは自分の中に「基準値」を持っているかどうかです。

【大人の基礎教養としてのモノサシ(日本編)】

  • 日本の人口: 約1億2000万人
  • 平均年収: 約460万円
  • 新卒初任給: 約23万円
  • コンビニの店舗数: 約5万6000店

これを知っているだけで、ニュースの見え方が変わります。「ある事業の売上が10億円」と聞いたとき、「国民全員から約8円ずつ集めた計算か」といった、立体的な視点を持てるようになるのです。

3. 未知の数字を推理する(フェルミ推定)

「近所のあのカフェ、1日の売上はいくらでしょう?」 店長に聞かずに、これを当てるゲームです。Googleの入社試験などでも有名な「フェルミ推定」ですが、難しく考える必要はありません。要は**「分解して考える」**ことです。

  • 席数は30席くらいか。
  • 半分くらい埋まっているな(15人)。
  • コーヒーとケーキで単価は800円くらい。
  • 1日にお客さんは10回転くらいするだろうか?

→「15人 × 800円 × 10回転 = 12万円」

正解することよりも、この**「桁(オーダー)感を掴むプロセス」**が重要です。投資や新規事業の規模感を掴む際、この感覚があなたの直感を支えてくれます。

4. 「変化」と「違和感」に敏感になる

数字そのもの(実数)を見ることも大切ですが、センスが良い人は**「率(%)」「異常値」**を見ています。

例えば、毎日の体重や、特定企業の株価。「今日は〇〇kgだった」ではなく、**「なぜ昨日より1kg(約2%)も増えたのか?」**と考えること。 「いつもと違う動き」には、必ず理由があります。定点観測を続けることで、変化の予兆を感じ取る嗅覚が養われます。

5. 数字を「絵」にする

「16.7%」と聞いて、パッと頭の中に「円グラフの約6分の1(ピザの1ピース)」が浮かびますか? 「1億円」と聞いて、100万円の札束(厚さ1cm)が1メートル積み上がった映像が浮かびますか?

数字の羅列を、頭の中で瞬時に**「グラフ」や「物理的な量」に変換する**トレーニングです。これができると、数字同士の関係性やインパクトを直感的に理解できるようになります。

最後に

こうして書き出してみると、私自身、日頃いかに「なんとなく」で物事を捉えていたか、ハッとさせられました。

「文系だから」と逃げるのはやめて、まずはランチの値段や、用事の時間を「予測」することから始めてみようと思います。 思考の習慣が変われば、きっと見える世界も変わるはずですから。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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