定年後「暇が怖い」と働き続けた私が、時間の余白の価値に気づくまで

思考・人生観

「退職したら、あれもしたい、これもしたい」

そう思っていたはずなのに、いざ退職してみると、頭の中はやりたいことであふれているのに、仕事をしていないことへの不安の方が勝ってしまう——こんな経験、あなたにもありませんか?

私自身、まさにそうでした。

そして、そこから抜け出すまでには、少しだけ遠回りをしてしまったのです。

退職直後、私はフルタイムのアルバイトで毎日を埋めていた

退職後すぐに、私が選んだ道は「フルタイムのアルバイト」でした。

頭の中には、やりたいことがたくさんあったはずです。読みたかった本、再開したかった趣味、落ち着いて向き合いたかった家族との時間——それなのに、実際に時間が空いてみると、それを楽しむよりも「仕事をしていない自分」に対する不安の方が、ずっと大きくなってしまったのです。

毎日のように求人情報を見ては、フルタイムのアルバイト先を探し、シフトを埋めていく。定年退職をしたという実感は、まったくありませんでした。むしろ、会社員時代と変わらない忙しさを、わざわざ自分で作り出していたように思います。

今振り返ると、これは多くの退職者が陥りがちな罠かもしれません。長年、仕事中心で生きてきた私たちにとって、「予定のない時間」は不慣れで、どうしていいか分からないものなのです。

「これではいけない」と気づいた日

ある日、ふと気づきました。

「これでは、何のために定年を迎えたのか分からない」

自分で選んで会社を離れたはずなのに、結局は仕事で時間を埋め続けている。これは本当に自分が望んだ姿なのだろうか——そう自問したとき、明らかに違うと感じたのです。

そこから少しずつ、アルバイトの時間を減らしていきました。いきなりゼロにするのは、私には難しかった。だからこそ、段階的に。

まずは勤務日数を1日減らす。慣れてきたら、もう1日減らす。こうして、少しずつ自分の時間を取り戻していったのです。

気持ちの余裕が生んだ、「じっくり考える時間」

時間を減らしていくにつれて、少しずつ気持ちに余裕が生まれてきました。

そして、想像していなかった変化が起きたのです。

これまで「考えたい」と思いながらも、日々に追われて考えられずにいたこと——老後の生活設計、これからの生き方、家族との時間の使い方——そういった大切なテーマを、じっくり考えられるようになったのです。

この変化は、思っていた以上に大きな効果を生みました。

  • 老後生活設計の精度が、ぐっと高くなった
  • 先々に対する漠然とした不安が、少しずつ和らいでいった
  • 「今、自分は何を大切にすべきか」の答えが、自分の中で明確になっていった

フルタイムのアルバイトに追われていた頃には、決して手に入らなかった種類の「答え」でした。

即断即決の時代に、あえて「じっくり考える」価値

振り返ってみると、現役時代の私は、かなり即断即決で物事を進めるタイプでした。

今の時代は、何よりスピードが重宝されます。意思決定が速いことは美徳。会議で迅速に結論を出すことが評価される。そうした環境で長年働いてきた私にとって、即断即決はもはや身体に染みついた習慣になっていました。

そのメリットは、もちろん認めます。素早い判断が必要な場面は、たしかにあるのです。

でも、定年後の私に必要だったのは、それとは正反対の時間でした。

自分が本当に大切だと思っていることを、時間をかけて考えてみる。

そのテーマに関する本を、何冊か続けて読んでみる。
気の合う友人たちと、その話題についてゆっくり語り合ってみる。

こうして時間をかけていくと、自分なりの考えや、参考になる生き方のヒントが、少しずつ見えてくるのです。急いで出した答えでは決して辿り着けない深さに、自分の思考が届いていく感覚がありました。

時間をかけて得たものは、きっと役に立つ

急いで出した答えと、時間をかけて考え抜いた答え。この二つには、質の違いがあります。

急いで出した答えは、すぐには使えるけれど、状況が少し変わると途端に通用しなくなることが多い。一方で、じっくり考え抜いた答えは、自分の中に深く根づいていて、人生のいろいろな場面で応用が効くのです。

定年後の私たちには、「時間をかけて考える」という贅沢が許されています。

これは、現役時代には決して手に入らなかった贅沢です。スケジュールに追われ、目の前の仕事に集中せざるを得なかった数十年を経て、ようやく手に入れた自分だけの時間。これを活かさない手はありません。

人生で初めての「時間の余白」を、楽しんでほしい

あなたにも、お伝えしたいことがあります。

「暇が怖い」という感覚は、たしかにあります。私自身、それをはっきりと経験しました。だから、その恐怖を否定するつもりはまったくありません。

でも、もし可能なら——

その時間の余白を「恐れるもの」として何かで埋めてしまうのではなく、「楽しむもの」として受け入れてみてほしいのです。

時間の余裕を、楽しむ。

人生を振り返ってみてください。学生時代、社会人時代、子育て期——どの時期を思い出しても、こんなに自分の時間が自由に使える期間は、なかったはずです。

これは、長年真面目に働いてきた私たちへの、人生からの贈り物のようなものかもしれません。

まとめ:暇を恐れず、余白を味わう

退職後、私は「暇が怖い」という気持ちから、フルタイムのアルバイトで時間を埋め続けました。でも、勇気を出してアルバイトを減らし、自分の時間を取り戻したとき、初めて「時間の余白」の本当の価値に気づいたのです。

即断即決の時代だからこそ、あえてゆっくり考える時間を持つ。
自分が大切にしていることを、じっくりと見つめ直す。
本を読み、友人と語り合う。

こうして得た答えは、きっと、これからの人生の確かな支えになります。

もし今、あなたが「暇が怖い」と感じているなら、まずは一日だけでいい。予定を入れずに、自分の好きなことだけに使ってみてください。

最初は居心地が悪いかもしれません。でも、繰り返すうちに、きっと気づくはずです。

この時間の余白こそが、人生で最も贅沢な贈り物なのだと。


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