【株式投資ABCノート】 米国株投資 為替ヘッジ Vol.3

株式投資ABC

そもそも「為替ヘッジ」とは何か?

一言でいうと、**「将来の為替レートを予約して、円高・円安の影響をキャンセルする保険」**のことです。

  • ヘッジなし: 「株価」と「為替」の両方の波に乗る。円安になれば利益が倍増するが、円高になれば資産が減る。
  • ヘッジあり: 「為替」の波を消し、「株価」の波だけに集中する。円高になっても資産は減らないが、円安の恩恵も受けられない。

知らないと怖い「ヘッジコスト」の正体

多くの人が見落としがちなのが、保険(ヘッジ)には**「コスト」がかかるという点です。 このコストは、単純な手数料ではなく「二国間の金利差」**で決まります。

ヘッジコスト ≒ 投資する国の金利 - 日本の金利

例えば、米国の金利が 5% で日本の金利が 0% の場合、年間で約 5% ものコストを払い続けることになります。 米国株の平均リターンが年 7〜9% だとすると、その半分以上がコストで消えてしまう計算です。この「見えない手数料」が運用成績をじわじわと削っていきます。


3. 商品別・投資スタイル別の「正解」は?

投資の目的によって、選ぶべき道は明確に分かれます。

① 米国株・全世界株(インデックス投資)

項目eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)S&P500 為替ヘッジありファンド(例)
為替ヘッジなしあり
コスト(信託報酬)業界最低水準(年 0.09%程度)やや高め + 別途ヘッジコスト
円安時の動き株価上昇 + 為替益で大幅上昇株価上昇分のみ反映
円高時の動き株価上昇 ー 為替損で相殺/下落株価上昇分が守られる

基本は「なし」が正解です。

  • 理由1: 長期(10〜20年)では、為替の変動よりも株価の成長が大きくなるため。
  • 理由2: 円だけでなく「米ドル」という資産を持つこと自体が、日本の円安インフレに対する最強のリスクヘッジ(分散)になるため。

② 海外債券

「あり」を検討する価値があります。

  • 理由: 債券は本来「守り」の資産です。為替で大きく動いてしまうと、守りの役割を果たせなくなるため、コストを払ってでも安定を優先する場合があります。

私たちはどう選ぶべきか

判断基準をシンプルにまとめます。

選び方向いている人・シーン
為替ヘッジ「なし」長期投資・新NISAでの運用。 円安対策として外貨を持ちたい。コストを最小限に抑えたい。
為替ヘッジ「あり」近い将来に使う資金。 歴史的な円安局面で「今後は円高にしか進まない」と確信がある場合。

投資において大切なのは、目先の円高を怖がることではなく、**「長期的なリターンを最大化するために、余計なコストを削ること」**です。

インデックス投資を主軸にするなら、どっしりと「ヘッジなし」で世界経済の成長に乗るのが、本質的な選択と言えるでしょう。

為替リスクの本質は何か?

為替ヘッジを検討する際、まず理解すべきなのは、為替リスクとは単なる「損」ではなく、**「価格の不確実性(ボラティリティ)」**であるということです。

  • リスクの正体: 外貨建て資産(米国株など)を日本円に換算する際の「掛け算の変動」です。
  • ヘッジの視点: 為替ヘッジとは、この「掛け算の片方(為替)」を固定し、「資産そのものの値動き」だけを抽出する作業と言い換えられます。

ヘッジの有無によるリスク構造の違い

為替ヘッジを行うかどうかで、投資家が抱えるリスクの「色」が変わります。

視点為替ヘッジ「なし」(リスクを受け入れる)為替ヘッジ「あり」(リスクを遮断する)
主な変動要因「株価(資産価格)」+「為替」「株価(資産価格)」のみ
リスクの性格分散投資(通貨も分散する)集中投資(資産価格のみに集中)
最大のリスク円高(資産価値が目減りする)コスト負け(金利差で利益が削られる)

「為替ヘッジ」というフィルターを通したリスクの捉え方

為替リスクを「ヘッジという手段」から逆算して理解するための3ステップです。

① リスクを「遮断」するか「相殺」するか

  • ヘッジあり(遮断): 為替予約によって物理的にリスクをシャットアウトします。
  • ヘッジなし(相殺): 「円安になれば儲かり、円高になれば損をする」という仕組みを、長期保有による時間分散や、他の資産との組み合わせで相殺(中和)させます。

② コストという名の「確定したマイナス」

ヘッジありを選ぶ場合、「不確実な為替リスク(変動)」を「確実なコスト(金利差)」に置き換えることになります。 現在のように日米金利差が大きい時期は、この「確定したマイナス」が運用において非常に重いリスクになります。

③ 通貨の集中リスクを避ける

日本で生活する私たちは、収入も預金も「円」に依存しています。

  • ヘッジをしてしまうと、資産のすべてが「実質的な円建て」となり、「円そのものの価値が下がるリスク(インフレリスク)」に対して無防備になります。
  • あえてヘッジをしないことは、ドルを持つことで「円という通貨のリスク」をヘッジしている、という高度な視点を持つことができます。

まとめ:本質的な理解

「為替リスクを消す(ヘッジする)ことは、円という通貨への依存度を高めることである」

短期的な「円高での目減り」を恐れてヘッジを選ぶのは「戦術」ですが、長期的に「通貨の分散」を考えてヘッジを外すのは「戦略」です。 投資信託の「あり・なし」を選ぶ際は、目先の変動率(リスク)だけでなく、この通貨分散の戦略を意識することが重要です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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