私が、普段から気にしていたことに、将来の認知能力の低下に、どういう準備しておけばいいのかがありました。そこで、私が大変共感した、このシステム1・2の話を深掘りしてみました。
──“自動運転の脳”をうまく使う話(※カーネマンのシステム1・2)
システム1の暴走を止め、必要なときだけシステム2を動かすコツ
スマホを開いた瞬間、気づけばおすすめ動画を見ている。
ニュースの見出しを見ただけで、不安になって検索を始めてしまう。
誰かの一言にカチンとして、すぐ返信しそうになる。
こういう経験、誰にでもあると思います。
そして私たちはよく、自分にこう言ってしまう。
「もっと冷静に考えないと」
「意志が弱いんだ」
「我慢が足りない」
でも、ここに大きな誤解があります。
実は、私たちの頭は最初から「自動運転」で動くようにできています。
意志が弱いからではなく、**自動運転が強すぎる環境(ノイズだらけの環境)**にいるだけ、という面が大きいのです。
※ダニエル・カーネマンは、人が「いつも合理的に判断するわけではない」ことを心理学の実験で示し、行動経済学の流れを大きくした研究者です。こうした功績で2002年にノーベル経済学賞を受賞しました。著書『ファスト&スロー』では、思考を「速い自動反応(システム1)」と「遅い熟考(システム2)」に分けて分かりやすく説明しています。
まずは超かんたんに:人の考え方には2つのモードがある
心理学者のダニエル・カーネマンは、人の判断を「2つのモード」で説明しました。
有名な本『ファスト&スロー』で広く知られる考え方です。
ここでいう「システム1」「システム2」は、脳の場所の話ではなく、**頭の使い方のモード(状態)**の話です。
システム1:速くて勝手に動く「自動運転」
システム1は、考える前に反応が出ます。
「面白そう」
「危ないかも」
「今すぐ見たい」
「なんかムカつく」
「この人、信用できそう」
こういう判断は、ほぼ一瞬です。
生活がスムーズに回るのは、この自動運転のおかげです。
ただし弱点もあります。
自動運転は速いかわりに、煽りや思い込みにも反応しやすい。しかも、脳の省エネ志向で大事な時でも、思わすシステム1で答えを出してしまうケースも見られます。
システム2:ゆっくりで意識して動かす「手動運転」
システム2は、いわゆる「ちょっと待てよ」と考える力です。
「目的は何だっけ?」
「比較してから決めよう」
「一晩置こう」
「今は返信しない方がいいかも」
ただ、この手動運転は燃費が悪い。
ずっと使うと疲れます。だから日常では、どうしても自動運転が主役になります。
ここがポイント:手動運転は“必要なときだけ”でいい
よく「冷静に考えよう」「いつも熟考しよう」と言われますが、現実には難しい。
疲れもあるし、情報量も多い。毎回じっくり考えていたら日常が回りません。
だから大事なのは、「いつも手動運転」ではなくて、こういう考え方です。
手動運転は、必要な場面だけ起動できればいい。
そして、その“必要な場面”を見分けるコツが、次です。
ループの話:自動運転→違和感→手動運転→次の自動運転が育つ
私たちの判断は、多くの場合こんな流れで動きます。
まず、自動運転が勝手に「こうしよう」と提案する。
そのあとで、違和感が出たら「ちょっと待て」と手動運転が入り、行動を修正する。
そして最後に、「次はこうしよう」という学びが残ると、次回の自動運転が少し賢くなります。
つまりこうです。
- 自動運転が先に動く
- 違和感が出たら手動運転が入る
- 学びが残ると、自動運転が更新される
これが、システム1(自動)とシステム2(手動)が回っていく“ループ”の正体です。

じゃあ「手動運転を入れるかどうか」は誰が決めるの?
答えは、自分自身です。
ただし、現実にはこういう形になっています。
まず、体が先にサインを出します。
焦り、怒り、不安、モヤモヤ。
これが「警報」です。
その警報が鳴ったときに、あなたが手動運転を入れる。
つまり「保留する」「比較する」「ルールで決める」。
この判断ができると、反射で失敗する確率が下がります。
要するに、感情は厄介ですが、見方を変えると 手動運転のスイッチにもなるわけです。
分かりやすくするために:手動運転が必要な場面を5秒で判定する
ここからが実用パートです。
「迷ったらこれを見る」くらいの簡単なものにします。
次のうち、ひとつでも当てはまったら、手動運転を入れる。
これだけでOKです。
- お金や信用など、損が大きい
- やり直しが効きにくい(取り返しがつかない)
- 焦り・怒り・不安が強い
- “急げ” “今だけ”みたいに煽ってくる
- そもそも目的が言えない(なぜ今それをする?が分からない)
この5つは、ノイズに振り回されやすい典型パターンです。
ここで手動運転を入れるだけで、だいぶ変わります。
手動運転のやり方は「30秒」で十分
手動運転と言っても、長く考える必要はありません。
むしろ長く考えるほど疲れて続きません。
やることは3つだけです。
まず「目的」を短く言う。
次に「ルール」を当てる。
最後に「次の一手」を1つ決める。
例を出します。
- 目的:落ち着く
- ルール:30分置く
- 次の一手:返信しない
これだけで、反射で失敗することが減ります。
そして一番大事:これを繰り返すと“自然にできる”ようになる
最初は手動運転が必要でも、同じ場面を繰り返すと、だんだん自動運転が賢くなります。
運転の練習と同じで、最初は意識していたことが、慣れると自然にできるようになります。
そのために役立つのが、「もし〜なら、こうする」と先に決める方法です。
- もし不安になったら、いったん閉じる
- もしイラっとしたら、30分置く
- もし高い買い物なら、一晩寝かせる
こうしておくと、考える前に体が止まるようになります。
これが「手動運転の知恵が、自動運転に移った」状態です。
まとめ:ノイズに勝つのは意志じゃない。習慣だ
ノイズの時代は、意志だけで戦うと疲れます。
だから、戦い方を変える。
自動運転を否定しない。
手動運転を酷使しない。
必要なときだけ手動運転を入れる仕組みを作る。
そして、学びを一行で残して、自動運転を少しずつ賢くする。
これができると、情報に振り回される時間が減り、判断の質が上がり、
「自分で選んでいる感覚」が戻ってきます。
老後につながる話:判断力は「若いうちに仕組み化」しておくと守りやすい
老後の不安は、お金の額そのものだけでなく、「判断を間違えたら取り返しがつかない」という種類の不安でもあります。たとえば、詐欺や不利な契約、焦って大きな買い物をしてしまうことは、損失が大きいだけでなく、精神的なダメージも残ります。高齢になるほど金融判断のミスや詐欺被害リスクが上がり得る、という研究もあります。
だからこそ、「自動運転を前提に、必要なときだけ介入する」という考え方は、老後の生活設計に直結します。ポイントは、体力や集中力があるうちに、いくつかの判断を“仕組み”に移しておくことです。そうしておけば、将来システム2が疲れやすくなっても、システム1の暴走を止めやすくなります。
たとえば、老後向けの介入ルールは難しくする必要はありません。大事なのは「高コストで不可逆な判断」だけを確実に止めることです。
具体的には、知らない相手からの電話やSMSでお金の話が出たら、どんなに急かされてもその場では決めず、いったん切って、家族や信頼できる第三者に確認する、と先に決めておく。
これは英語圏でも“第三者確認(verify with a trusted person)”が強く勧められる考え方で、日本でも警察が高齢者の詐欺被害を抑えるためにATM送金の制限などを検討する背景には、「衝動的に動かされる場面を減らす」という発想があります。
もうひとつ大事なのは、「記憶力や判断力が落ちたときのために、日常の手続きを簡単にしておく」ことです。支払い、口座、保険、サブスク、パスワードなどを増やし過ぎると、それだけでシステム2の負担が増えます。老後の安心は、増やすことより、減らして整えることから作れます。
最後に、日本では「自分が迷惑をかけないように」と一人で抱え込みやすい、英語圏では“早めに共有して守る(サポートネットワークを作る)”という説明が比較的前に出やすいです。
ここはどちらが正しいというより、老後に必要なのは「自分の弱りを前提に、助けが入る入口を作っておく」という現実的な態度だと思います。判断力は精神論では守れないので、仕組みと関係性で守る。この結論は、老後になればなるほど効いてきます。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。


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