後編 VLOOKUP卒業:エクセルを”列追加”から”関係でつなぐ”モダン運用へ

エクセル

モダンエクセルは「機能の名前を覚える」話ではなく、月次・週次の作業を“更新ボタンで終わらせる”ための分業です。
やることは大きく4つ。順番もそのままです。

1. TABLE(Ctrl+T)=データの整理箱(まず土台を作る)

実務で何が困っている?

  • データが増えるたびに SUM範囲が足りない
  • フィルタや並べ替えで、どこまでがデータか分からなくなる
  • 列追加すると数式が壊れたり、コピー漏れが出たりする

テーブル化すると何が起きる?

「範囲」から「データ」になります。

テーブルにすると、行が増えても自動で範囲が広がり、集計や参照が追随します。

実務の“効きどころ”(ここが旨味)

  • 集計漏れが減る(行が増えても追随)
  • 列名で参照できる(何を計算してるか読める)
  • ピボット・Power Query・データモデルへ渡しやすい(後工程がラク)

まずCtrl+T。ここが最初の一歩で、効果も早いです。


2. Power Query=整形&結合(毎月の下ごしらえを“レシピ化”)

実務で何が困っている?

月次で毎回こういう作業、やってませんか?

  • CSVを開いて不要列を削除
  • 日付形式がバラバラで直す
  • 数値が文字になっていて直す
  • 商品名の表記ゆれ(全角/半角、スペース)を直す
  • 複数CSVを1つにまとめる
  • 途中で人によって手順が微妙に変わる(=数字のブレ)

Power Queryがやること(超実務)

「データを食べやすい形に整える」担当です。

“手作業の工程”をクリック操作として記録し、来月は同じ手順を再実行します。

実務の“効きどころ”

  • 「毎月同じ下ごしらえ」が 更新で終わる
  • 手順が残るので、引き継ぎしやすい
  • 「誰がどう加工した?」が追えるので、説明が楽

Power Queryは“時短ツール”というより、再現性ツールです。


3. Power Pivot(データモデル)=接続&モデル化(VLOOKUP卒業の本丸)

実務で何が困っている?

VLOOKUPで明細にこういう列を増やしていくと…

  • 商品名、カテゴリ、担当、地域…と列が増殖
  • マスタ変更で直しが連鎖(過去ファイルも含めて崩れる)
  • どこが正しいのか追いにくい(同じ情報が複数箇所に存在)

データモデルがやること(実務の言葉で)

**「表を分けたまま、つなげて使う」**担当です。

  • 売上明細は明細のまま(ID中心)
  • 商品マスタはマスタのまま(正はマスタ)
  • 店舗マスタも別で持つ
  • それらを **“つながり(リレーションシップ)”**で結ぶ

これができると、明細に商品名を埋め込まなくても、

ピボットで「商品名別売上」などの集計ができるようになります。

実務の“効きどころ”

  • 列追加が減る(明細が太らない)
  • 変更に強い(マスタ差し替えで済みやすい)
  • 「正」はマスタに集約でき、整合性が保ちやすい

“列を引っ張る”から “関係でつなぐ”へ。ここが卒業ポイントです。


4. Pivot Table=可視化&一瞬で更新(最終レポート)

実務で何が困っている?

  • 毎月、同じレポートを作り直している
  • 集計切り口が増えるたびに、別シートを増やして管理が破綻
  • 数字が変わったときに、修正漏れが起きる

ピボットがやること(実務の言葉で)

**「レポートは器として固定し、データが変わったら更新で反映」**です。

  • レポートの形(器)はなるべく変えない
  • 元データを更新 → ピボット更新 → グラフも更新
  • “作る”より“回す”が主役になる

実務の“効きどころ”

  • 月次が「作業」から「更新」へ変わる
  • 切り口変更に強い(地域・商品・担当…の追加が楽)
  • 同じ器を使い回せるので、ミスが減る

4つのパートを一言でまとめると

  • TABLE:壊れにくいデータの土台
  • Power Query:毎月の下ごしらえをレシピ化
  • Power Pivot:表を分けたまま関係でつなぐ(VLOOKUP卒業)
  • Pivot Table:最終レポートを器として固定し、更新で回す

本記事では、従来型エクセルは“いつもの作り方(コピペ・範囲参照・VLOOKUP)”、モダンエクセルは“仕組みで回す作り方(テーブル・取り込み・関係・更新)”として表記します。

ここでのゴールは1つです。
明細に列を埋め込まなくても、商品名や地域で普通に集計できる状態を作る(=VLOOKUP不要)。

よくあるVLOOKUP増殖の“現場例”(なぜ苦しくなるのか)

想像しやすい「売上集計」を例にします。

典型:売上明細がこうなっていく

最初は明細に必要な列だけがあります。

  • 日付 / 伝票番号 / 店舗ID / 商品ID / 数量 / 単価 / 売上

ここに報告用に必要な情報を足すため、VLOOKUPが増えていきます。

  • 商品名(商品IDから引く)
  • カテゴリ(商品IDから引く)
  • 仕入先(商品IDから引く)
  • 店舗名(店舗IDから引く)
  • 地域(店舗IDから引く)
  • 担当者(店舗IDから引く)

結果、明細が横に太り、こうなります。

VLOOKUP増殖が生む“現場のつらさ”

  • 列が増えるほど壊れやすい(範囲漏れ、コピー漏れ、列ズレ)
  • マスタが変わるほど直しが連鎖(カテゴリ改定、担当替え)
  • 説明しづらい(「この列、どこから来た?」が追えない)
  • ファイルが重い(式が大量、計算が遅い)

ここで発想を変えます。

「明細に埋め込む」のをやめて、

明細はIDのまま保ち、必要なときに“関係でつなぐ”。


テーブル分離(明細 / マスタ)=“データの持ち方”を変える

リレーショナル運用の第一歩は、表を分けることです。

つくるテーブル(最小構成)

A. 売上明細(Fact):増え続ける表

  • 日付
  • 店舗ID
  • 商品ID
  • 数量
  • 売上(数量×単価 でもOK)

B. 商品マスタ(Dimension):意味づけの表

  • 商品ID(ここがキー)
  • 商品名
  • カテゴリ(必要なら)

C. 店舗マスタ(Dimension):意味づけの表

  • 店舗ID(ここがキー)
  • 店舗名
  • 地域(必要なら)

商品名やカテゴリは売上明細に書かない。店舗名や地域も書かない。

明細はIDで持ち、意味はマスタが持つ。

つまり、レポートは“器”として育ちます。

ここでの注意(つまずきポイントを先に潰す)

  • 商品マスタの 商品IDは重複しない(同じIDが2行あると破綻しやすい)
  • 店舗マスタの 店舗IDも重複しない
  • 明細側(売上)のIDは重複してOK(むしろ重複が普通)

リレーション設定(関係を作る)=VLOOKUPの代わりを作る

次に、これらのテーブルを データモデルに載せて関係を作るフェーズです。

手順(ざっくり迷わない版)

  1. 売上明細・商品マスタ・店舗マスタをそれぞれテーブル化
    • それぞれの範囲で Ctrl+T(テーブル化)
    • テーブル名を分かりやすく(例:Sales / Product / Store)
  2. 各テーブルを データモデルに追加
    • ピボット作成時に「このデータをデータモデルに追加」的なチェックが出る環境が多いです
    • もしくはPower Pivot側から「データモデルに追加」
  3. 関係(Relationships)を作る
    • 売上明細(Sales)の
      • 商品ID → 商品マスタ(Product)の商品ID
      • 店舗ID → 店舗マスタ(Store)の店舗ID

“正しい関係”の形(これだけ覚える)

  • マスタ(Product/Store)が「1」
  • 明細(Sales)が「多」

この形になっていればOKです。

ここができた瞬間から、Excelの中は「小さなデータベース的な世界」になります。


ピボットで集計(商品名別・地域別が“列追加なし”でできる)

ここが体感ポイントです。

VLOOKUPで列を引かなくても、ピボットで集計できます。

まず作る:商品名別売上

  • 行:Product[商品名]
  • 値:Sales[売上](合計)

これだけで、商品名別売上が出ます。

ポイントは、売上明細に商品名列がなくても出ること。

次に作る:地域別売上

  • 行:Store[地域]
  • 値:Sales[売上](合計)

さらに:地域 × カテゴリのクロス集計

  • 行:Store[地域]
  • 列:Product[カテゴリ]
  • 値:Sales[売上](合計)

ここで「切り口を増やす=列を増やす」ではなく、

ピボットの配置を変えるだけになります。


マスタ変更が来たときの強さ比較(ここが現場で一番効く)

最後に、現場で絶対起きる“変更”で比較します。

ケース:カテゴリ体系が変更になった

例:カテゴリ「家電」を「白物」「黒物」に分ける、など。

VLOOKUP運用の場合

  • 明細に埋め込んだカテゴリ列をどうする?
    • 過去の明細も含めて作り直し?
    • 既存列は放置して新列を追加?
  • どちらでも、列が増え、修正箇所が増え、事故が起きやすい

リレーショナル運用の場合

  • 直すのは基本 商品マスタ側だけ
  • 集計は関係を通じて変わる
  • レポート(器)はそのまま、更新で反映しやすい

まとめ:VLOOKUP卒業とは「列追加をやめる」こと

ここまでを一言でまとめると、こうです。

  • VLOOKUP運用:明細を完成させるために列を増やす
  • リレーショナル運用:明細はIDのまま、関係で集計する

そしてモダンエクセルの流れ(前編の図)に戻すと、

  • TABLE:データを壊れにくい形に整える
  • Power Query:下ごしらえをレシピ化(繰り返しを更新へ)
  • Power Pivot:表を分けたまま関係でつなぐ(VLOOKUP卒業)
  • Pivot:器として固定し、更新で回す

「まず何からやる?」なら、順番はこれが安全です。

  1. いまの明細をテーブル化(Ctrl+T)
  2. 商品名・地域など“意味の列”を、明細からマスタへ移す(分離)
  3. データモデルで関係を作る
  4. ピボットで集計してみる(商品名別→地域別→クロス集計)

かなり説明が長くなってしまいましたが、全体の流れは、掴めたかと思います。エクセルは自分で手を動かして覚えていくものですから、こういった長文は合っていないかもしれません。少しでも、効率アップにつながれば、幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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