「ローンを借りて、そのお金を運用すれば、差額で儲かるんじゃないか?」
投資の世界をのぞいていると、一度はこんな魅力的なアイデアに出会います。いわゆる**「イールドギャップ(利回り差)」**を狙った戦略です。
私も初めてこの仕組みを聞いたときは、「なんて効率的なんだ!天才の仕業か?」と膝を打ちました。しかし、ペンを手に取り、数字を並べてシミュレーションを始めると……。そこには、理論上の計算だけでは語れない**「冷や汗が出るような現実」**が隠れていました。
そこで今回は、数字で一度シミュレーションして「どこが落とし穴になりやすいか」を確認してみます。
検証:「最後にまとめて精算」なら、確かに計算上はプラス
投資が毎年きれいに年7%で複利運用でき、最後にまとめて清算できるなら、
- 投資残高:5,000,000円 × (1.07^5) ≒ 7,012,750円
- 投資の増加分:≒ 2,012,750円(税・手数料前)
- 課税も考慮すると(約20%)≒1,610,200円
一方ローン返済は、毎月の支払総額が概ね
- 月々:約89,840円
- 60回総額:89,840円 × 60回 = 5,390,400円
- 支払利息分:概ね 390,400円(端数調整で多少ブレます)
この“最後にまとめて精算”だけを見ると、利回り7%と金利3%の差が効いて、勝てそうに見えます。

検証:現実は「毎月の返済」がある。投資を取り崩すと複利が壊れる
ローンは毎月支払が発生します。
もし返済原資を投資から毎月取り崩すなら、投資は「長期で寝かせて複利を回す」状態ではなく、**毎月引き出す運用(取り崩し運用)**になります。
試しに、投資が“理想的に”毎月一定で回り、年7%が毎月均等に出ると仮定しても(かなり非現実的ですが)
- 毎月89,840円ずつ取り崩して返済に回す
- 5年後の投資残高は 約656,000円 まで縮みます
つまり、年7%がきれいに出ても、「2,000,000円儲かる」ではなく「約656,000円残る」 に変わります。
理由は単純で、取り崩しが複利効果を薄めてしまうからです。
| 運用スタイル | 5年後の手元残高 | 特徴 |
| A:最後にまとめて精算 | 約161万円 (税引後) | 複利が最大化するが、返済原資を別途用意する必要がある |
| B:毎月取り崩して返済 | 約65万円 | 複利が破壊される。 利益が半分以下に激減する現実 |
検証:最大の問題は「順番」—最初に下落が来るとほぼアウト
さらに本質的なのがここです。投資のリターンは年7%が保証されません。
- 3%の年もある
- 5%の年もある
- マイナスの年もある
- 10%超の年もある
特に厄介なのは、最初のほうで下落が来るパターンです。投資の世界では、「収益率の順序リスク」といって非常に重要な概念だそうです。
返済は待ってくれないので、下落した資産を取り崩すことになり、回復局面での伸びを自分で削る形になります。
参考として、(あくまで単純化した)シミュレーションでは、年平均7%・価格変動あり、毎月取り崩しを行う条件だと、5年後に投資残高がマイナスになる確率が3割台という結果も出ます。
ここでのポイントは「確率の数字」そのものより、**“勝てる前提がかなり複雑”**だという事実です。

結論:イールドギャップは「利益の確定」ではなく、大きな賭けに近い
理屈としては「差があるなら儲かる」に見えます。
しかし実態は、
- ローン金利は確実に発生するコスト
- 投資リターンは不確実
- 取り崩しで複利が弱まり
- リターンの“順番”で結果が大きく変わる
イールドギャップは“堅い戦略”ではなく、不確実性に賭けたレバレッジ投資になります。
私からすると、大きな賭けに売ってまで、精神を不安定には絶対したくないというのが、そのままの気持ちです。一見、数字ではプラスになると考えてしまいがちですが、予測できない株価の値動きを考慮すると、とても実行する気にはなりません。これが私の結論です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました


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