【人生攻略の武器③】ゲーム理論:「相手」がいる戦場で負けない『勝負の戦略書』

人生観

「相手の出方次第で、こちらの運命が変わる」

標準的な経済学(電卓)では、「雨が降りそうだから傘を持つ」という判断をします。天気はあなたの行動を見て「じゃあ晴れにしてやろう」とは考えないからです。 しかし、ビジネスや人間関係は違います。「あなたが値下げ」をすれば、競合は「さらに値下げ」をしてくるかもしれません。

ゲーム理論とは、このような**「自分の利益が、相手の行動によって決まる状況(ゲーム的状況)」**において、どうすれば勝てるか(あるいは負けないか)を数学的に解き明かす学問です。

チェスや将棋のように、相手の裏の裏まで読んで、最適な一手を見つけ出すための**「3つの基本戦略」**を解説します。


「囚人のジレンマ」:なぜ「賢い人」同士が「最悪の結果」を招くのか?

ゲーム理論で最も有名、かつ恐ろしい概念が**「囚人のジレンマ」です。 これは、「お互いが自分の利益を追求して『合理的』に行動した結果、全員が損をする」**という現象です。

【具体例】牛丼屋の値下げ戦争

A店とB店が向かい合っています。牛丼は一杯500円です。

  1. A店の思考: 「もしB店が500円のままなら、ウチが400円に値下げすれば客を総取りできる(利益増)。もしB店も値下げしてきても、ウチだけ高いままだと客を取られるから、やっぱり値下げ一択だ」
  2. B店の思考: 「A店がどう出ようと、ウチも値下げしないと損をする」

【結果】 両店とも「値下げ(裏切り)」を選びます。その結果、客数は変わらないのに単価だけが下がり、両店とも疲弊します。本当は**「両店とも500円を維持(協調)」**していれば、一番利益が出たはずなのに、です。

【日常生活での応用:『協調』への道を探る】

ビジネスや夫婦喧嘩で「泥沼の争い」になりそうな時は、このジレンマに陥っています。 抜け出すには、**「報復の約束」**が有効です。

  • ビジネス: 「他店より1円でも高ければ値下げします(最低価格保証)」と宣言する。これは一見競争に見えますが、実は**「相手が値下げしない限り、こちらも値下げしない」**という暗黙の協調サイン(価格維持の提案)として機能することがあります。

「ナッシュ均衡」:ここが「落とし所」だ

ゲーム理論のゴールの一つが**「ナッシュ均衡」を見つけることです。 これは、「お互いに、これ以上戦略を変えるメリットがない状態(均衡点)」**のことです。

【具体例】合コンの席順

男性陣と女性陣が向かい合って座るとします。 誰もが「一番人気の異性の前」に行きたいですが、全員がそこに殺到すると喧嘩になります。かといって、端っこに行き過ぎると損をします。 いろいろ動いた結果、**「これ以上誰かが席を移動すると、その人が損をする配置」**に落ち着きます。これがナッシュ均衡です。

【解説】 ナッシュ均衡は、必ずしも「全員がハッピーな状態(全体最適)」ではありません(先ほどの値下げ競争も、悪い意味でのナッシュ均衡です)。 しかし、**「放っておくと最終的にそこに落ち着く場所」**です。

【日常生活での応用:『未来』を予測する】

新しい企画やルールを作る時、この「均衡点」を意識してください。 「みんなが善意で動いてくれるはず」というルールは崩壊します。そうではなく、**「みんなが自分の利益のために動いた結果、自然と守られるルール(ナッシュ均衡)」**を設計するのがリーダーの役割です。


「戦略的コミットメント」:退路を断って、相手をコントロールする

ゲーム理論は、ただ相手の出方を待つだけではありません。自分からアクションを起こして、相手の選択肢を狭めることができます。これを**「コミットメント(束縛)」**と呼びます。

【具体例】歴史上の「背水の陣」

ある将軍が、敵地に攻め込んだ後、乗ってきた船をすべて燃やしてしまいました。

  • 相手(敵軍)の思考: 「あいつら、帰る船がないぞ。もう『勝つか死ぬか』で死にものぐるいで攻めてくるはずだ。まともに戦ったらヤバい。降伏するか、逃げよう」

【解説】 自分の選択肢(逃げる)をあえて捨てることで、**「本気度」**を相手に伝え、相手の行動(戦う)を変えさせたのです。

【日常生活での応用:『自分』を人質にする】

  • 価格交渉: 「予算はこれしかありません。これ以上なら、上司の決裁が必要で1ヶ月かかります(あるいは契約できません)」と伝える。自分の権限(選択肢)がないことを示すことで、相手に「この価格で飲むしかない」と思わせます。
  • 締め切り: 「来週までにやります」ではなく、「来週の会議で発表する会場を予約しました」と言う。やらざるを得ない状況(コミットメント)を作ることで、自分と周囲を動かします。

まとめ:「先読み」と「逆算」で勝つ

ゲーム理論の極意は、**「Look Forward, Reason Backward(先を読み、後ろから考える)」**です。

  1. Look Forward(先を読む): 「自分がAをしたら、相手はBをするだろう。そしたら自分はCをして…」と未来の展開図(ゲームの木)を描く。
  2. Reason Backward(逆算する): 最終的なゴールから逆算して、「今の最善手」を決める。

「相手」がいる世界では、自分の都合だけで動くと必ず足をすくわれます。 この**「戦略書(ゲーム理論)」**を開き、「相手にとっての合理性」を想像できた人だけが、戦場を支配できるのです。


さて、ここまでで「損得(経済学)」「心理(行動経済学)」「戦略(ゲーム理論)」が揃いました。 しかし、これらすべての選択を下しているのは、最終的には私たちの**「脳」**です。

次回は、その司令塔である「脳」の中で一体何が起きているのか? ドーパミンや脳波のレベルからパフォーマンスを最大化する武器、**『神経経済学(脳のメンテナンス)』**について解説します。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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