複利の正体は「忍耐」である:暴落や不安に負けない「心の持ち方」

投資

複利がいかに時間を味方につける「最強の魔法」かを理解できたとしましょう。でも、この魔法には一つだけ厄介な条件があります。それは**「途中で絶対にやめないこと」**です。

理屈ではわかっていても、これが一番難しい。なぜなら、複利をジャマする最大の敵は、景気の悪化ではなく、あなた自身の「脳」と「心」の中に隠れているからです

私たちの脳は「ゆっくり増える」のが大嫌い

まず知っておいてほしいのは、**「人間の脳は、複利のスピード感を理解するのが超苦手」**だということです。

私たちの先祖は、何万年もの間「足し算」の世界で生きてきました。「1キロ歩けば1キロ進む」「リンゴを2個拾えば2個増える」。やった分だけ、すぐ目に見えて増えるのが当たり前だったのです。

ところが、複利はどうでしょう? 最初の10年、15年は、驚くほど変化がありません。一生懸命に節約して積み立てているのに、通帳の数字はカタツムリのような歩みです。脳はこう叫びます。 「こんなに頑張っているのに、ちっとも増えないじゃないか!時間のムダだ!」

この**「脳のイライラ」**を事前に知っておくだけで、「今はまだ雪だるまの芯を作っている時期なんだな」と、一歩引いて自分を眺めることができます。面白くないと感じるのは、あなたが順調に進んでいる証拠なのです。

2. 暴落は「脳のパニックボタン」を押しにくる

投資を続けていれば、必ず「大暴落」という嵐に襲われます。ニュースで不穏な文字が躍り、資産の数字がゴリゴリ削られていく。このとき、私たちの脳内ではとんでもないことが起きています。

脳の奥深くには、恐怖をキャッチする「扁桃体(へんとうたい)」というアラーム装置があります。 お金が急激に減るのを見ると、この装置が**「ライオンに襲われた!殺される!」と大騒ぎを始めます。実はこれ、脳にとっては「指をドアに思いっきり挟んだ時」**と同じくらいの痛みとして感じられているんです。

こうなると、冷静な判断を司る「理性の脳」はシャットダウンしてしまいます。「痛い!すぐ逃げなきゃ!」という本能だけが暴れ出し、せっかく育てた資産を、一番安い時期に投げ売りしてしまう……。これが「パニック売り」の正体です。 これは性格の問題ではなく、生き物としての反射。だからこそ、根性で耐えようとしてはいけません。

暴落の日をやり過ごす「3つの魔法の言葉」

では、このパニックにどう対処すればいいのでしょうか?プロが実践している、もっとラクな「心の整え方」を3つご紹介します。

① 「今は、アプリの電源を切る時」

暴落した時、一番やってはいけないのは、何度も証券口座の画面を見ることです。見れば見るほど、脳の痛みは強くなります。 そんな時は、スマホを置いて外に出ましょう。ゆっくり歩いたり、軽く走ったりして、身体を動かしてください。運動をすると、脳の中に「安心感」をくれるホルモンが流れます。理屈で考えるよりも、**「身体を動かして脳をリセットする」**ほうが、何倍も冷静になれます。

② 「お金は、幸せに使うためのチケット」

数字が増えることだけに必死になると、心がすり減ってしまいます。 複利で増えたお金は、将来のあなたが「自由な時間」を楽しんだり、大切な人と美味しいものを食べたりするための「チケット」です。 「このお金で、10年後はどんな楽しいことをしようかな?」 そうやって出口の楽しみに目を向けると、目先の小さなガタガタ道が、それほど気にならなくなります。

③ 「木を育てる人」の気分でいよう

投資の進んでいる海外では、よく複利を**「木を植えること」に例えます。 苗木を植えたあと、毎日掘り起こして根っこをチェックする人はいませんよね?嵐が来ても、「ああ、今は木が鍛えられているな」と見守るだけです。 お金も同じです。あなたが寝ている間も、仕事をしている間も、複利というパートナーが勝手に働いてくれています。あなたはただ、「時々様子を見る親切な大家さん」**くらいの気持ちでいればいいのです。

再度、見てみます。

あなたが今日から「月5万円」を年利5%で積み立てたとします。20年後の景色はどう変わっているでしょうか?

期間積立合計(元本)運用収益(利息)資産合計
5年目300万円41万円341万円
10年目600万円176万円776万円
15年目900万円436万円1,336万円
20年目1,200万円855万円2,055万円

この表をよく見ると、複利の「加速の正体」が見えてきます。

  1. 最初の10年間で増えた利息: 176万円
  2. 後半の10年間で増えた利息: 679万円(855万円 - 176万円)

なんと、後半の10年間だけで、最初の10年間の「約4倍」も利息が増えています。
さらに注目すべきは20年目の時点です。積立元本は1,200万円ですが、利息だけで855万円も積み上がっています。「自分が出したお金」と同じくらいの金額を、「複利」が勝手に稼ぎ出してくれる状態に入っているのです。

本質で生きるための「静かな決意」

世界はどんどん便利で速くなっています。でも、木が育つのに時間がかかるように、複利が本気を出すのにも「時間」が必要です。

複利を味方にするというのは、ただお金を貯めることではありません。 **「目先の不安に振り回されず、時間の力を信じて待つ」**という、カッコいい生き方を選び取ることです。

嵐が来て、心がざわついたら思い出してください。 「今、脳が『指を挟んだ』と勘違いしているだけ。大丈夫、雪だるまはまだそこにある。」

この「心の地図」さえ持っていれば、あなたは複利のカーブがぐーんと空に向かって伸びていく、最高の瞬間を必ず迎えることができるはずです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました

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