パソコンというものが、まだこの世になかった頃から仕事をしてきました。
手書きの書類、紙のファイル、朝のミーティングでの文書の読み上げ。今では想像しにくいかもしれませんが、それが私の若い頃の日常でした。
そんな私が、いま、「パソコンが自分で考えて動いてくれる時代」に立ち会っています。隔世の感、という言葉では足りないくらいの変化です。
Windows95がやってきた日
あの頃、Windows95が発売され、パソコンというものが広く知られるようになりました。それから数年後、勤めていた会社でも1人1台のパソコンが支給され、仕事の生産性が大きく上がったのを覚えています。
今ではもう想像することも少なくなりましたが、パソコンの導入によって、仕事の形はいくつも変わっていきました。
オフィスには「文書棚」というものがありました。紙のファイルを保管しておく棚です。そこに本社からの連絡文書などがファイルに綴じられ、保管されていました。情報の伝達は、毎朝のミーティングで上長から部下に口頭で伝えられ、その後回覧され、文書棚に戻るという流れでした。
回覧を先にしていては伝達が遅れてしまうので、全員の前で、文書が到着するとすぐに読み上げられていました。やがて紙の連絡文書からメールを使うようになり、この朝のミーティングも週1回程度に減り、内容も、一方通行の情報伝達から、お互いの状況確認の場へと変わっていきました。
当時は、取引先からの注文を電話で受ける専門の部署もありました。人数にして約15名、大方が女性で占められていました。その部署も、時代とともになくなり、オンラインでの注文が主流となっていきました。
セールス個人の売上状況も、社員用の端末で見られるようになりました。すると、各セールスがエクセルを使って自分なりの分析を始めるようになります。便利になった一方で、会社にいる時間がかえって長くなっていったような感覚もあります。


「これを自動でやってくれないか」と願った日々
営業職だったので、早く取引先へ出発しようと心掛けてはいました。しかし、パソコンの使い方に悪戦苦闘したり、他の社員の分まで面倒を見たりして、上長に指摘されて慌てて会社を出ていくことも、しばしばありました。これも当時の苦い思い出です。
毎朝のメール処理、エクセルへの転記、同じような報告書の作成。繰り返される作業を目の前にして、「これを自動でやってくれないか」と願った日は、数えきれません。
あの頃、「RPA」という言葉を耳にするようになりました。RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコン上の決まった作業を自動でやってくれる仕組みのことです。たとえば「毎朝9時にエクセルを開いて、データをコピーして、別のシステムに貼り付ける」といった繰り返し作業を、ロボットのように代わりにやってくれます。エンジニアの人たちが使いこなしているのを横目で見ながら、「いいなあ、自分もああやって自動化したい」と思ったものです。けれど、私には手が届きませんでした。専門知識がないと扱えない道具だったからです。「自分には関係のない世界だ」と、静かに諦めていました。
その扉が、いま開いた
それから長い時間が経ちました。
いま、私はAIエージェントという新しい道具と出会っています。日本語で指示するだけで、パソコンが自分で考えて動いてくれる——そういう時代が、ついに始まりました。プログラミングの知識がまったくない私のような人間でも、パソコンを自動で動かしたり、ホームページを作ったり、小さなアプリを作ったりできるようになっています。
会社員時代に諦めたあの夢が、いま、この手の中にあります。
もちろん、新しい道具にはいつも気をつける点があります。完全な道具など、この世にはありません。足りない部分は理解したうえで、良いところを最大限に使う——それが、この歳になって私が辿り着いた付き合い方です。恐れすぎず、過信もせず、楽しみながら使う。それが一番、生活が豊かになる道だと感じています。
大きな波は、もう来ている
こうして振り返ってみると、驚くほど生産性が上がってきたことがよくわかります。もう、かつての仕事のやり方を同じように続けることはできません。新しい時代の波をうまく習得して、個々の生産性を上げていくことは、とても理にかなったことだと思います。
ここへきて、パソコンの自動化という波は、間違いなく大きな波になっていくでしょう。パソコンの誕生、インターネットの誕生、スマートフォンの出現——これらに匹敵するほどの大きな変化が、いま目の前で起こっていると感じています。
このシリーズでは、そんな時代の中で、私自身が実際に体験し、試し、つまずき、気づいたことを、ひとつずつ記録していきたいと思います。エンジニアでもプログラマーでもない、ただの一人の退職者が、AIという新しい道具とどう向き合っていくのか。その素直な記録です。
同じ時代を生きている皆さんと、この大きな波を一緒に楽しんでいけたらと思っています。
【このシリーズについて】
この記事は「パソコンのなかった時代から追いかけてきた、自動化という夢」シリーズの第1回です。非エンジニアの私が、AIエージェントと向き合いながら体験したことを、ひとつずつ記録していきます。


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