インターネットの海には、見るだけで胸がざわつくような「不快な動画」や「炎上ニュース」が溢れています。「見なければよかった」と後悔するのに、なぜ指先は次の動画をクリックしてしまうのでしょうか。
そこには、人間の脳に組み込まれた原始的な仕組みと、文化による「情報の処理方法」の違いがあります。
1. 脳が仕掛ける「恐怖と快楽」のループ
私たちが不快なものを見たとき、脳内では主に2つのプロセスが動いています。
- アラート鳴り響く「アドレナリン」: 恐ろしいものや不快なものを見ると、脳の扁桃体が反応し、アドレナリンが分泌されます。これは「闘争か逃走か」を判断するための生存本能です。
- 安堵が生む「ドーパミン」: 「自分は安全な場所にいる」と脳が認識した瞬間、危機が去ったという報酬として**ドーパミン(快楽物質)**が放出されます。この「恐怖→安堵→快感」というサイクルが、一種の中毒性を生み出してしまうのです。
2. 日本的な「共感」と「道徳的優越感」
日本において、こうした動画は主に**「感情(Empathy)」**のフィルターで処理されます。 動画の登場人物に自分を重ね合わせる「二人称視点」が強く、「もし自分が被害者だったら」「加害者は許せない」という強い感情の揺さぶりを体験します。また、マナー違反などを批判することで「自分は正しい側にいる」という自己肯定感を確認する材料として消費される側面があります。
3. 英語圏の「Curiosity(好奇心)」と「Logic(論理)」
一方、英語圏(特にRedditなどの掲示板文化)では、不快な事象をより**「三人称視点」**、つまり解剖学的な分析対象として捉える傾向があります。
- Curiosity(知的好奇心): 不快な事象を「未知のデータ」として扱います。「人間の心理はどこまで歪むのか?」「物理的にどうしてこうなったのか?」という、タブーへの純粋な探究心が不快感を上回ります。
- Logic(ロジカルな解析): 「どのシステムが故障したのか」「どの判断がミスだったのか」という因果関係の解明です。不快な刺激を「感情」として受け取る前に「情報」として整理し、リスク管理や知識として蓄積しようとします。
| 項目 | 日本(感情・共感的) | 英語圏(論理・分析的) |
| 脳の主な反応 | 扁桃体の興奮(共感的苦痛) | 前頭前野の活性(客観的分析) |
| 視点 | 主観(自分がその場にいる感覚) | 客観(モニターの外から観察する) |
| 処理の結果 | 「胸糞悪い」という感情の共有 | 「なるほど、こういう仕組みか」という納得 |

まとめ:不快を「制御」するためのリテラシー
不快な動画に惹かれるのは、脳が世界を理解し、生存確率を高めようとする「知的欲求」の裏返しでもあります。 感情的に寄り添い、道徳を確認する日本的な視点。そして、冷徹に構造を分解し、知識へと変える英語圏的な視点。
大切なのは、自分の脳が今「感情」で反応しているのか、それとも「論理」で分析しようとしているのかを客観的に自覚することです。不快な情報に振り回されず、それを「知的なサンプル」として昇華させる視点を持つことは、現代の過剰な情報社会を生き抜く強力な武器になるはずです。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。


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