本能を支配する「上書き」の技術  後編

思考

〜マラソンと投資で磨く、納得感のある人生のハンドル操作〜

前編では、私たちの頭の中にいる「直感くん」と「論理さん」という2人のパイロットを紹介しました。 後編では、暴走しがちな直感くんをどうやってコントロールし、人生のハンドルを自分の手に取り戻すのか。その具体的な「上書き」の技術についてお話しします。

1. 上書きのトリガーは「一呼吸の問い」

直感くんが「もうダメだ!」「逃げろ!」と叫んでいるとき、私たちの視野はギュッと狭くなっています。この状態を打破する唯一のコマンド、それが**「問いを立てること」**です。

「ちょっと待てよ、今のこの感情の正体は何だ?」

この一言を自分に投げかけた瞬間、のんびり屋の「論理さん」がパッと目を覚まします。これが「思考のレンズ」を取り出す合図です。

2. ケーススタディ:システム1をシステム2で上書きする

具体的に、私が日頃から実践している「上書き」の例を見てみましょう。

場面直感くんの叫び(エラー)論理さんによる「上書き」
マラソン35km地点「足が痛い、もう無理だ、歩こう!」「心拍数は160、※LT値(乳酸作業閾値)の範囲内。この痛みは脳の防衛反応に過ぎない。あともう少しで体勢は整う。(※注:本物の怪我でない限り)
相場急落時投資「資産が減ってる!怖い!今すぐ全部売らなきゃ!」「元々15年の長期戦だ。※アセットアロケーションは崩れていない。むしろ今は※リバランスのチャンス。戦略通りに淡々と継続しよう。」
仕事のトラブル「うわ、どうしよう!誰のせいだ?最悪だ!」「まず起きた事象を分解しよう。解決後に目指すべきゴールはどこか?今、打てる最善の一手は何だ?」

※LT値-これ以上ペースを上げると、急激に疲れが溜まり始める境界線
※アセットアロケーション-株、債券、現金といった異なる資産を、どのような割合で組み合わせるかという「運用の設計図」のこと
※リバランス-当初の割合からズレてしまった資産配分を、元の計画通りに調整する「メンテナンス」のこと

このように、感情という「ノイズ」を、事実と論理という「言葉」で塗りつぶしていく。これが**「上書き(オーバーライト)」**の正体です。

3. 「思考のレンズ」を磨くということ

もちろん、この上書きは魔法ではありません。 マラソンで言えば、日頃から自分のデータ(心拍数やペース)と体感の相関関係を言葉にしておく訓練が必要です。投資なら、あらかじめ自分の「負けパターン」を言語化して、戦略という名のレンズを磨いておく必要があります。

もちろん、最後は自分の納得の上で、自己責任というハンドルを握る。それが大人の「上書き」の作法です。体の本当の悲鳴(怪我)まで無視して論理で走るのが正解とは限りません。大切なのは、直感くんの言いなりになるのではなく、**「レンズを通して本質を見極めた上で、自分で決める」**ということです。

4. 結び:知る、わかる、動く。その先に。

私が信じているのは、「知る(データ)」を「わかる(論理的な納得)」に変え、それを「動く(確固たる行動)」に繋げることで、人生の幸福度は劇的に上がるということです。

AIが答えを教えてくれる今だからこそ、私たちは「自分だけの言葉」で、自分自身の思考を書き換えていかなければなりません。

あなたの「思考のレンズ」は、今、曇っていませんか? 言葉を磨き、問いを立てる。 その小さな積み重ねが、あなたをより自由で、豊かな人生へと運んでくれるはずです。

いかがでしょうか。 「上書き」という力強いアクションと、「思考のレンズ」というしなやかなメタファーがうまく融合したと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

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