私たちは変化の激しい時代を生きる中で、つい「現状維持」を安全な場所のように感じてしまいます。しかし、実はその安全に思えた場所の壁は、私たちがじっとしている間に少しずつ削り取られているかもしれません。
**「不作為のリスク(やらないことによるリスク)」**という視点から、私たちの生活に潜む具体的な危機を考えてみます。
1. 【資産のリスク】インフレという「静かな泥棒」
投資には元本割れのリスクがあります。それを恐れて「全額現金」で持っておくことが最も安全だと考える人は多いでしょう。しかし、ここには大きな落とし穴があります。
- 購買力の低下: 物価が上がるインフレ局面では、現金の価値は相対的に目減りします。100万円の貯金で買えていたものが110万円出さないと買えなくなった時、何もしなかった人は実質的に資産を失っています。
- 新NISAなどの機会損失: 非課税制度という強力な武器を使わずに放置することは、複利という「人類最大の発明」を自ら放棄しているのと同じです。
- 「守り」と「攻め」のバランス: ただし、特に老後生活においては、急な出費に対応するための「短期資金(すぐ出せる現金)」の必要度が高まります。インフレ対策としての投資(攻め)と、生活防衛のための現金(守り)のバランスを、自身のポートフォリオを常に見直しながら進めることが重要です。
2. 【健康のリスク】動かないことで進む「機能の返納」
怪我を恐れて運動を控える、あるいは「疲れるから」と活動を縮小することは、身体にとって最も残酷な選択になることがあります。
- フレイル(虚弱)の加速: 特にシニア世代にとって、筋肉や骨密度は「使わなければ消える」資産です。マラソンのような持久走も、日々の小さな積み重ね(LT値を意識したトレーニングなど)を止めた瞬間から、走るための経済性(ランニングエコノミー)は崩壊し始めます。
- 自立の喪失: 転倒を恐れて歩かなくなることが、結果として筋力を奪い、最も恐れていた「寝たきり」のリスクを自ら手繰り寄せてしまうのです。
3. 【スキルのリスク】AIを避けることで生まれる「格差」
「AIなんて難しそう」「今のままでも不便はない」と新しい技術を敬遠することは、単なる食わず嫌いでは済みません。
- 生産性の致命的な差: AIを使い始めている人とそうでない人の間には、情報の処理速度において数倍から数十倍の差が開きます。自分にとっての新しい価値を発見しましょう。
- 「時間」という資本の浪費: 5分で終わる作業に数時間をかけ続けることは、自分の貴重な人生(残り時間)を、技術への拒絶反応によって浪費していることと同義です。

4. 【精神のリスク】「後悔」という名の重い負債
心理学では、短期的な後悔は「やってしまったこと」に対して起こりますが、長期的な後悔は「やらなかったこと」に対して起こると言われています。
- 現状維持バイアス: 人間は変化を嫌いますが、変化しないことは「成長の停止」であり、周囲が進化する中では「相対的な退化」を意味します。
| 比べるポイント | 「やる」リスク(挑戦) | 「やらない」リスク(放置) |
| ダメージの正体 | 「擦り傷」 失敗すると一瞬痛いが、すぐ治る。 | 「虫歯」 最初は痛くないが、気づいた時には手遅れ。 |
| 自分で直せるか? | 工夫できる 次はどうするか、自分で対策を打てる。 | どうしようもない 物価や老化など、自分では止められない。 |
| 残るもの | 「経験値」という宝 失敗しても、次はもっと上手くやれる。 | 「後悔」というゴミ 「あの時やれば…」という重荷だけ残る。 |
結論:リスクを「管理」して味方につける
リスクをゼロにすることは不可能です。私たちは常に、「動くリスク」か「動かないリスク」のどちらかを背負って生きています。
それならば、じわじわと劣化していく「見えない借金(やらないリスク)」を背負うよりも、自分の成長につながる「前向きなコスト(やるリスク)」を、自分の手でコントロールしながら支払っていきませんか?
最後までお読み頂き、ありがとうございます。


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